明日は卒業式の前日。
生徒たちと関わる最後の日になります。
最後に離任の挨拶をしないといけないので、こんな感じで話してこようと思いやす。
これまで散々ふざけた話をしてきたので、最後に真面目な話をしたいと思います。
今日みんなに話したいことは、この教育という仕事のやりがいについて。
僕はそもそも、教育という仕事をしたいとは思っていませんでした。
大好きなサッカーの選手になれなくて、でもサッカーを仕事にしたくて、仕方なくコーチという道を選びました。
そんな思いで最初この教育という仕事を始めて、とにかく上手くいかないことばかりでした。
僕は本当は根っからの人見知りで、当時は全く自分から選手たちに話しかけることができませんでした。
それに当時僕が働いていた高校は、全国大会に連続で出場している県内トップの高校でした。
なので、他の監督やコーチと同じように県内トップレベルの指導を求められていたのですが、僕は本格的にコーチとして働くのが初めてだったこともあって全然良い指導ができませんでした。
いつも言い訳をしていました。 まだ初めて半年だから。選手たちがやんちゃだから。そもそもコーチがしたかったわけじゃないし。。
毎日監督やコーチたちに怒られて、僕が指導していたカテゴリーの選手たちも面白くなさそうに練習しているし、その姿を見ていると本当に辛くて辞めたくて仕方がありませんでした。
半年で耐えきれなくなって、監督に「辞めさせてほしい」とお願いをしました。
それなのに監督に言われた言葉は、
「お前のひん曲がった根性を叩き直すまでは、絶対に辞めさせないからな」
監督
でした。 不適切な言葉だけど、「こいつマジでぶっ飛ばす」と心の底から思いました。
こっちは苦しいのになぜ辞めさせてくれないのかと、頭おかしいんじゃないかと。
でも、冷静になって自分のそれまでの半年を振り返ってみたんです。
よくよく考えてみたら、僕は選手たちに向き合えていなかったことに気がつきました。そのことに気がついたときに、悔しさと恥ずかしさが自分の中で沸き起こりました。
それと同時に、選手たちと真正面から向き合ってみようという気持ちも湧いてきました。
そこからめちゃめちゃ本を読んでサッカーを勉強し直して、選手たちに自分から積極的にコミュニケーションを取るようにして、時には選手たちとぶつかりながらトレーニングをするうちに、少しずつ自分のコーチングが上手くいくようになりました。
結果として、自分の担当カテゴリーはリーグ優勝もできたし、トップチームも無事全国大会に出場して、僕も一緒にチーム全員で帯同する貴重な経験もできました。
嬉しかったのは、全国大会に行く前の全体ミーティングで、監督と第二コーチが今年一番伸びたのが僕が教えていたカテゴリーの選手たちだと言ってくれて、選手たちが喜んでいた姿を見ることができたことでした。
そして、最後に僕が教えていたカテゴリーの選手たちから、
まつをコーチと一緒にサッカーができて良かったです。
担当カテゴリーの選手たち
と言われました。
その1年は給料も低く周りからも笑われて本当に辛かったけど、この言葉で救われたし、誰かの心に残るって幸せなことなんだなと思いました。
僕は、選手や生徒の記憶に残りたいと思ってこの仕事をしています。
その思いってのは自分自身の大きなエゴなんですけどね。
エゴだとわかってはいるんだけど、でもやっぱり生徒と向き合うからには心に残りたいんです。
でもね、選手や生徒の記憶に残るって簡単なことじゃないです。みんなも分かると思うけど、そんなに記憶に残る人ってたくさんいないはずです。
それだけ大変なことと知ってはいるからこそ挑戦したいと思うし、たくさん本も読んで、実践して、失敗して、家で毎日反省しています。
あの声かけは良かったのだろうか、あのアプローチよりももっと良いものはあったのだろうかってね。
だけどそうやって真剣に取り組むことで、少しずつこの教育の仕事に誇りを持てるようなりました。
僕は教育という仕事を尊い仕事だと思っているのですが、それには2つの理由があります。
一つ目は、教育という仕事には終わりがないんです。
どういうことかというと、選手や生徒一人一人によってサポートが異なるし、届く声かけも違うとなると、一つの決まった型がないんです。
だからこそこの仕事は、いつまでも追及のし甲斐があるんです。
もちろんそれを探すことは本当に大変だし、失敗も多いし、答えがなかなか見つからず長い時間迷うことも多いけど、だからこそ面白いとも言えます。
そしてもう一つの理由は、教育という仕事には終わりがあるんです。
つまりどういうことかというと、選手や生徒とは今日みたいに、いつか別れる日が来るということです。
僕が一人で教えることができる事なんてたかが知れているので、いつかは僕の元から離れる必要があります。
確かに寂しいことではあるけど、でも絶対に必要なことでもあるのです。
だからこそ、終わりが来ることがわかっているからこそ、みんなとの一日一日が貴重なんです。
みんなと話す一つ一つの会話には、価値があるんです。
いつか終わることがわかっているから、僕はみんなと過ごす時間一つ一つにメッセージを込めるように意識してきました。
今日の最後の挨拶で、僕からみんなに伝えたいことは一つです。
毎日を大切に生きてください。
そしてもしできるなら、周りの人たちとの会話一つ一つに価値を見出してください。
正直言って、仕事に行きたくない時もあります。
「ふざけんなよ」とか「めんどくせーな」と思うことも多々あるし、ムカつくことなんてしょっちゅうで、サボりたくなることだってあります。
でも僕は、監督にどちゃくそ怒られて以降、一度も仕事を休んだことはありません。
なぜって、僕は終わりのない教育の仕事を追及する中で、必ず終わりがあることを知っているから。
みんなといつかは別れる日が来るとわかっているからこそ、絶対に休まないように体調管理も気をつけて、病気を起こさないようにしてきました。
選手や生徒の記憶に残る仕事がしたいと思うのであれば、それはやって当たり前のことだから。
投げ出したくなる時こそ、僕は終わりを思い描くようにしています。
最後に、僕は『アルケミスト』という小説が大好きなのですが、その中から特におすすめの名言を1つみなさんに贈ります。
毎日の中に永遠があるのだ
『アルケミスト』
この言葉の意味は、ここまでの話からそれぞれが解釈してほしいです。
最後にもう一度、みなさん、一日一日を大切にしてください。
そして一つ一つの会話に価値を見出してください。
みなさんの成長を間近で見ることはできないけれど、これからは遠くの地から応援しています。
いつかまた成長した姿を見れるのを楽しみにしています。
1年間、最高に楽しかったです。ありがとう。
感動の涙を引き出しました。
帰り際にたくさんの生徒から別れや感謝の言葉を貰い、先生とは呼ばせなかったけど、彼らにとって僕は先生であったのかもしれないと思いました。
担任の生徒たちを持ったことで、僕は”先生になった”のかもしれないな。