今回の欧州遠征を通して思うことがあったので、僕が考える日本代表のチーム哲学について書きます。
長くなるかもしれませんが、お暇な方はお付き合いいただけると。そして、意見など頂けると嬉しいっす。
引用:http://1093.seesaa.net/article/234527104.html
何を日本代表のチーム哲学とするべきか?
世界には細かくパスを繋いでボールを保持するポゼッションサッカーや、相手のスキをついて素早く攻撃に転じるカウンターサッカー、とにかく固い守備陣形を作って相手の攻撃を跳ね返すリトリートサッカーなど、様々なチーム哲学・戦術があります。
その中でも僕は日本サッカーには、細かいパス交換で相手陣内に攻め込んでいくポゼッションサッカーを哲学にするべきだと思います。
このサッカーを育成年代から浸透させていくことで、日本はアジアではもちろんのこと、世界でも互角に戦える力をつけることができると思っています。
理想でいうと、オシム監督の「考えて走る」サッカーと、バルセロナの「圧倒的なボールポゼッション」サッカーの融合です。
日本が世界と互角に戦うことができた試合のサッカーは、ショートパスを多用し相手の陣形を崩していくパスサッカーで挑んだ時の方が圧倒的に高い成果を挙げています。
特に、ジーコ監督時代の中田、中村、小野、稲本などの黄金世代を中心としたサッカーや、オシム監督時代の選手一人一人が考えて走り、見事な連携で崩していくサッカー、ザッケローニ監督時代のDFラインから丁寧な繋ぎで相手より多くの時間ボールを保持しながら崩してくサッカーなど、それらの時期に戦った欧州勢とは、良い試合をしているケースが多々ありました。
実際、3人の監督はコンフェデ杯や欧州遠征で勝利を収めたり、負けはしたものの内容で勝る試合をしたりと、結果がついて来ていました。
「ジーコやザッケローニはワールドカップで結果を残していない!」
と言われてしまえば確かにその通りなのですが、結果を残した時のトルシエ監督や岡田監督は、一度ワールドカップを経験していたというアドバンテージがありました。
これはとても大きな差で、初出場でベスト16以上の結果を残すことができた監督は多くありません。なので、ワールドカップでの失敗は当然の結果だったと言えるわけです。
ではどうすればよかったのか?
今回はザッケローニ監督とハリルホジッチ監督の2人に焦点を当てて、今後日本が歩むべきサッカーの発展を考えていきたいと思います。
日本でのザッケローニとハリルホジッチの哲学
まず、2人の監督が日本代表を指揮する際に大事にしていた哲学を比べてみます。
- ザッケローニ → 日本の選手の特性を生かした、ポゼッションサッカー
- ハリルホジッチ → 自分の得意な縦に速いサッカーに、日本の選手を当てはめる
僕はどちらの監督も、自分なりのサッカー哲学を持っており、それがその監督自身の価値であると思っています。
ただ、どちらがより日本代表に合っているか判断することはできます。
ザッケローニ監督です。
ハリルホジッチ監督のサッカー
ハリルホジッチ監督の縦に速いサッカーは確かに現代的で、今のバルセロナもポゼッションと併用している戦術であり、バイエルン・ミュンヘンやレアル・マドリードはこの戦い方で世界のトップにいると思います。
ただ、この戦い方が日本に合うかどうかで言うと、合わないと僕は断言します。実際に、主任してから一度も結果を残せていませんよね。
アジアレベルでは、という限定付きで結果は出ていますが、最終予選は苦戦の連続でした。オーストラリア戦に関していえば、僕はたまたま戦術がはまっただけだと思っています。アジア以外の国が相手では、言うまでもありませんよね。
ではなぜこの戦い方は、日本に向いていないのでしょうか?
それは日本人の体格や運動能力が理由にあります。
日本人は平均身長が小さく、身体も華奢で足が細い人が多いです。つまり、横への移動といった小回りは効くけれど、縦に速い強力なスプリント力を持っていないのです。
しかし、ハリルホジッチ監督の目指す「縦に速いサッカー」は、文字通り縦に速く進んでいかなければなりません。日本人にはこの能力を持っている人は、ごくごくわずかです。要するに、難しいです。
レアルやバイエルン、その他この戦術を取り入れているチームのメンバーはどのような人がいるでしょうか?クリスティアーノ・ロナウドやベイル、リベリーやロッベンなど、縦への爆発的なスピードを武器にしている選手がサイドを制圧して優位に試合を進めています。
ここに挙げた選手たちは、緻密なトレーニングによって鍛え上げられた肉体を持っています。強靭な足腰で、力強いスプリントを行うことができるのです。
では日本にはこのような選手はなぜ、いないのでしょうか?それは、先に挙げた日本人の身体の特徴が原因であるからです。
つまりいくらこの戦術やりたくても、このスプリントができる選手がいないので諦めざるをないのです。なので、ハリルホジッチ監督が、ずーっとチーム作りに苦戦している理由はここにあります。ハリルホジッチ監督の縦に速いサッカーを体現できる選手は、日本にはそもそもいないのです。
原口選手についていえば、日本では少ない縦へのスプリント力を持つ良い選手ではありますが、ブンデスリーガの1部ではスタメンで出れるかどうかのレベルであり、まだまだ世界のトップレベルで勝負することができません。
ザッケローニ監督のサッカー
ザッケローニ監督はとにかく日本選手の特性を生かした、細かくパスを繋いでフィジカルコンタクトを避けながら、相手のゴールまで迫っていくサッカーです。
ファンの中には、「フィジカルコンタクトを避けることなどできない」と言う人もいますが、ザッケローニ監督の後にフィジカルコンタクト歓迎のデュエルサッカーでの結果が今ですよね。どうでしょう、日本人がフィジカルサッカーをすることはできたでしょうか?
できませんでしたね。
実は岡ちゃんの時のサッカーを、ガチガチの守備重視のサッカーと勘違いしている人も多いのですが、実は攻撃の時は細かくパスを丁寧につないでゴールに迫る、日本人に合ったサッカーをしていました。
ただあの時は、今の日本代表の決まらないウィングよりも完成度の高い大久保と松井の2人を起用していたことで、決定力に若干の物足りなさを感じるものの、個で突破できるウィングを置くことで、本田はフィニッシャーに専念することができたのです。
3トップの鉄則
- 再度にフィニッシャーを置く場合は、センターは2ウィングの得点をお膳立てできるチャンスメイカータイプのCFを置く
- サイドに得点力よりも個での打開力を売りにしている選手を置く場合は、センターはフィニッシャータイプを置く
この鉄則を守って3トップを組めば、結果を残せる仕組みになっています。ちなみにこれ、クライフのサッカー哲学です。今度詳しく紹介します。
ザッケローニ監督のサッカーの弱点は、守備にありました。ですが、これは僕に言わせれば当たり前で、スペインやドイツレベルのポゼッションができてやっと、守備も完成するのです。ポゼッションサッカーの醍醐味は、ポゼッションそのものが守備になるという点であります。ボールを長い時間保持していることはつまり、その時間相手は一切攻めることができません。また、ひたすらボールを追いかけることは体力的にも非常にハードなのです。
なので、ポゼッションサッカーは攻めながらも守っているという、一石二鳥の戦術なのです。さらに、日本のようにフィジカルに弱点を持っているのであれば、相手に身体を当てられる前にボールを味方に繋げ続けることができれば、その弱点も覆い隠すことができます。
皮肉なことに、日本がやるべきサッカーをされていたのが、昨日のウクライナ戦です…。
となると、日本サッカーが採用するべき哲学は一目瞭然ですよね。
日本サッカー協会のミス
僕は日本サッカー協会の悪いところは、監督を長期的に育てる、信用するという辛抱強さに欠けているところだと思います。
これはあくまでも僕の予測ですが、恐らくこの4年間もザッケローニ監督が続投していたら、よりポゼッションサッカーが洗礼されて、アジアではもちろんのこと欧州の強豪国とも渡り合えたと考えています。
やはり、残念だったのはワールドカップ直前に、守備の脆さが浮き彫りになり、本来の遠藤と長谷部のダブルボランチを崩してしまったことです。ここから完全にチームの試合運びが悪くなり、結局本番では立て直せないままグループリーグ敗退という結果に終わってしまいました。
また、ザッケローニ監督にとっても初めてのワールドカップという大舞台で、とても緊張しているように見受けられました。それはメンバー選考にも出ていて、それまでは自分の哲学に沿った選手を入れていたのにも関わらず、迷走してしまって周りに入れろと言われた選手をいれてしまうミスを犯しました。本戦でも、浮足立った指揮に終始していましたしね。ザッケローニ監督にも、自分の信念を貫く辛抱強さに欠けていたと思います。
せっかく良いサッカーをしていたので、なおさら残念でしたね。
ただこれは、一度経験すれば必ず次に生かせることだと思います。なので、この結果を踏まえてザッケローニ監督なら、次の大会では必ず結果を出してくれると僕は思っていました…。
それがファンや教会の目の前の結果しか見ていない浅はかな声と決断のせいで、日本がより強くなるチャンスを棒に振ってしまいました。
次の監督はどうすべきか?
ザッケローニ監督を再度招聘しろ!とは言いません。
それも1つのいい案ではあると思います。ただ、この事実をわかっていない人が多い世の中では、ザッケローニ監督が復帰してもどうせ、「ワールドカップで結果を残せない監督はいらない!」と声高に批判するだけでしょう。
でも、僕はそのような人たちの問いたいです。
失敗しない人はいるんでしょうか?監督も一人の人間です。失敗はします。
岡ちゃんだって、初めてのワールドカップでは散々な結果でしたよね?
でもその時の失敗を活かして、川口のようなベテランを招集して上手く選手の緊張をほぐしたり、とにかくモチベーションを高く保たせるための動画や意識改革を行ったりして、見事結果に繋げました。
ワールドカップを経験したことのある監督を使う必要はありません。経験がなければ、一度経験させてあげる長期的なプランをむしろ考えてほしいです。
そして次の監督が誰になるかはわかりませんが、日本人の特性をよく知っているか、あるいは理解しようと努力してくれる監督を長く起用する必要があると僕は思います。
日本代表の発展には、ドイツサッカー協会やドイツ代表のレーヴ監督がとても参考になります。この話は、また別の機会に取り上げます。
最後に、僕は密かに手倉森監督が良いと思っています。
というのも、今回のワールドカップにコーチとして帯同するだけでなく、2年前のオリンピックにも出場していて、今回のワールドカップでダメだった点(まだやってないけどw)や大きな大会で指揮する精神力や意味を学んでいるはずです。
外人監督はもうやめて、日本の監督を育てるべきだと僕は思います。
僕は今回の監督選びの失敗を、次は絶対に繰り返さないでほしいと心から願っています。
頼むぞ日本サッカー協会!
追記:日本サッカー協会がハリルホジッチ監督を解任!
遂に恐れていた酷い状況に、日本代表が陥ってしまいましたね。
ハリルホジッチ監督のサッカー自体は好きではありませんでしたが、この日本サッカー協会のやり方には疑問を感じざるをえません。
前回大会から何も改善できていない協会の体制がより一層浮き彫りになったのが、今回の監督人事だと僕は思っています。
ネットの議論でも言われているように、もしハリルホジッチ監督を解任するのであれば、
- 最終予選直後
- ワールドカップ後
この2択のどちらかを取るべきであったと僕は思います。強いて言うなら僕としては、ワールドカップを終えて契約満了で終えてよかったと思います。
なんやかんやで今回のハリルホジッチ監督の選ぶ選手で挑む代表がどんなものになるか、楽しみであったのが正直なところ。
予想はもちろん全敗ですが、前回通じなかったパスサッカーの代わりに取り入れた縦に速いサッカーが、どこまで通じるか見てみたかったです。
これで無理だったら、スパッと以前の戦術に戻れますが、今回の人事のせいで、縦に速いサッカーが通じるかわからずじまいになってしまいました。
残念過ぎる…。
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