8月に入り、移籍も落ち着き始め徐々にそれぞれのチームが新シーズンへの最終調整を始める時期になりました。
今年は久保選手や南野選手も強豪から中堅へと活躍の場を移し、飛躍の年になるのかどうなのか注目の1年になりそうですね。
さて今日は、
「部活やクラブの監督やコーチって、どんな選手が好きなんだろう?」
という疑問について、コーチ経験のある僕なりに解説していければと思います。
以前、このような記事を書きまして、
僕のこのブログの中で地味に一番読まれているのですが、今回はもっとシンプルに「こういう選手!」と示したいと思います。
最近、試合に出れなくて困っているんだよね…という選手は、何か参考になるものがあれば幸いです。
「足元が上手い」選手が好かれるのか?
サッカーコーチをしていた時に選手たちから聞かれたのが、
「まつをコーチ、やっぱりレギュラーは上手い選手だけを選ぶんですか?」
という質問でした。
答えを言ってしまうと、半分正解で半分間違いなんですね。
サッカーにおける”上手い”という言葉の定義はポジションによって異なりますが、例えば足元の技術が上手い選手を好んで、スタメンを全員そういった選手で揃えるかというとそうではありません。
あくまでも”足元が上手い”選手は一つの特徴を持っているにすぎず、11人のスタメンみんなが同じ特徴を持っていたら逆にそれでは強みを生かすことができなくなります。
それぞれが異なる個性を持ち、それを上手く掛け算で掛け合わせて最大の効果を発揮することで、チームはより強くなるのです。
もちろん足元が上手いに越したことはありませんが、
足元が上手い選手≠監督から好かれる選手
ということを知っておいてほしいです。
「自分の言うことをよく聞く」選手が好かれるのか?
次によく聞かれるのが、
「足元の上手さじゃないなら、やっぱり監督の言うことを聞く選手が好かれるの?」
という質問です。
これも、半分正解で半分間違いなんですね。
もちろん監督の立場として、自分の指示を聞いてくれる選手の方が、自分の思い描くゲームプランを体現してくれると考えるでしょう。
監督は必ず試合に向けて相手に勝つための準備をしますが、実際に試合をするのは選手たちに他なりません。
そのため、時には試合の中で選手自身で状況判断しなければならない時は絶対にあるもので、そういった時に監督の言うことを聞いてばかりいて”自分の頭で考える”ことができないのであれば、それもまた監督としては使いづらさを感じてしまいます。
そもそも監督は「好き・嫌い」で判断はしない
そもそも監督はスタメンの選手を決める際の判断基準に、”好き・嫌い”というものはありません。
もちろん中には、自分の言うことをよく聞く選手だけを並べるだけで、自分と性格が合わない(嫌い)選手を外す監督もいますが、そういった監督は三流以下でしょう。
一流の監督というのは、常により良いチームをつくり、より良い成績を修めようと努力しています。そういう監督にとって、足元が上手いことや自分の言うことをよく聞くことのように、自分に都合が良いかどうかはスタメンを決める際の重要事項にはなりません。
一流のチームには必ずと言っていいほど曲者がいるのが常ですが、監督はそういった選手も上手く管理しなければなりません。
それよりも大事なことは、チームの中で自分の強みを発揮できる選手かどうかになります。
その選手に「敬意を持てるかどうか」は重要
では、チームの中で自分の強みを発揮できる選手とは、どういった特徴を持っているのでしょうか。
僕は、こういった選手は
- 周りを見ながら、自分の頭で考えてプレーできる
- チームに貢献するために、個のレベルアップを追求し続ける
この2つの特徴を持っていると感じています。
サッカーはミスから得点が生まれるスポーツなので、逆に言えばいかにミスを少なくするかが勝利を手繰り寄せるために重要な要素になります。
守備の時に穴となるスペースはどこか、攻撃の時に相手のミスを誘えるタイミングはあるか…などなど、90分の中のあらゆる場面に隙を見出して、そこをカバーする・突くことができる選手は有能ですよね。
そういった選手は何をしているのかというと、やはり自分の頭で考えているのです。なぜなら、監督は1分ごとに選手1人1人に指示を出すわけないからこそ、自分で考える必要があるからです。
例えばパス1本、フリーラン1回でも、ただなんとなくやるのか、味方を思い遣って・相手DFを翻弄させようとするかでチームへその1プレーが及ぼす価値は大きく変わります。
そういった1つ1つの何気ないプレーにも自分の考えを込めることができる選手は、監督にとっても試合で大きな信頼を寄せることのできる選手であります。
また、そういった選手は味方や相手を常に観察しているからこそ、自分に足りないものがいつも見えています。足りないものが分かるからこそ、それを埋める努力をするのです。
分かっているのに埋めようとしないのは、それはきつい言い方をすると怠慢でしかありません。
常にこのレベルアップを志している選手は普段の練習姿勢も他と異なるので、やはりそういう選手は監督の目にも良く映ります。
そういった選手に対して監督は好き・嫌いなど陳腐な感情ではなく、敬意を抱くのです。さらにいえば、チームへの貢献に対する感謝の念も生まれます。
いつもありがとう。君を信頼しているよ。
そう監督に言わせることができる選手はなかなかいません。だからこそ、チームで数少ない選手として、毎試合出続けることができるのです。
例えば、前回の記事で焦点を当てた宮市選手なんかはまさにそうです。
ケガの影響もあって毎年試合に出続けているわけではありませんが、どこのチームでも監督や周りの選手、スタッフに信頼されているのは、そういった特徴があるからなのかもしれません。
他にも、各クラブで活躍している選手なんかはみんなそうでしょう。
サッカーとはコミュニケーションのスポーツである
さて、最後に改めてサッカーというスポーツについて考えてみましょう。
ルールは相手よりたくさんゴールした方が勝つというシンプルなものですが、その勝つために重要な要素って何でしょう?
もちろん個々人の上手さや戦術といったものが挙がってくるでしょうが、そういった上手さや戦術をチームに上手くはめ込むためには、やはり選手・監督・スタッフの中でのコミュニケーションがとても重要になります。
なぜなら、お互いがお互いの好き勝手にプレーをしたり指示をしたりしても、チームがまとまらず相手のスキを突くことなどできないからです。
チームが一つにまとまるためには、意見は言いつつもみんなの納得解を出すための賢明なコミュニケーションの継続が必要です。
それができた時にチームは一つにまとまりますし、そのために動ける人が、チームにとっての重要なピースになるのでしょう。